海外子会社との取引における見えざる課税リスク ~寄付金課税をうけないために~ | アタックス税理士法人 国際部

海外子会社との取引における見えざる課税リスク ~寄付金課税をうけないために~

2019年9月13日

近年、経済社会がますます国際化している中で、 「パナマ文書」、「パラダイス文書」の公開や BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの進展などにより、 国際的な租税回避行為に対して、国民の関心が大きく高まっています。

国税局は2017年12月に 「国際戦略トータルプラン」の各取組を推進し、 課税上問題がある場合には、積極的に調査等を実施するなど 適切に対処していく方針を発表しています 。

国税局が発表した海外取引法人等に対する実地調査(2016年)では 調査件数は13,585件(前年度104.1%)、 追徴税額は2,366億円(前年度102.5%)となっています。

その中で日本を代表するグローバル企業の 国際取引で影響を与える事例が報告されました。

(日経新聞2018年9月11日から要約)

パナソニックは、2017年3月期までの2年間で、 海外子会社の売却を巡り421億円の所得の申告漏れを 大阪国税局から指摘されたと発表しました。

孫会社の株式をオランダの子会社に売却した金額が 不当に安かったとみなされ、当局は本来の適正な売却額よりも412億円安く、 差額を寄付金とみなして更正通知を出しました。

このほか9億円で費用や収益の計上漏れがあるなどと指摘を 受けています。

パナソニックは売却額は適正として不服を申し立てる模様です。

推測ですが、オランダは税法的に特殊な国なので、タックスプランニングを意識した取引を行ったものと考えられます。

パナソニックは効率化の一環でオランダの子会社に株式を移したもので、 売却額について「専門機関の評価を受けており適正だった」と説明しています。

この処理について企業内および国際税務の専門家に 税務判断を行なっていたかどうかが不明確ですが、 結果として指摘を受けた事実は重要です。

過去(2013年)にもパナソニックは複数の海外子会社 に対する販促費や広告複数の海外子会社 に対する販促費や広告費などの経費のほか、 人材や技術の無償支援について、 国税局から100億円の寄付金の指摘を受けています。

本事例のような海外子会社との取引における見えざる課税リスクは 大企業のみの問題ではありません。

日本親会社が海外子会社に人財や技術面の役務提供による支援をする場合はよくありますが、実務上は海外子会社が業績不振により 債務超過等となっているために 対価をとらない場合が多く見受けられます。

この取引は税務調査の際には必ずと言っていいほど問題になります。

調査官は、通常であれば 海外子会社から費用を受け取る必要があり、 無償支援は海外子会社への「寄付金」 となることを主張してきます。

最近の税務調査での寄付金課税は、 特に赤字の海外子会社との取引について、 財務支援を目的として対価を収受しない場合や、 海外子会社に有利となる取引価格の設定を行っている場合に、 「寄附金」として課税するケースが非常に多くなっています。

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