2019年11月、国税庁から平成30年度の税務調査実績が公表されました。
これによれば法人税のなかでも国際税務関係(主に海外子会社との取引)の否認金額は増加傾向にあり、 その税務処理に注意が必要であると考えられます。
私共が、税務調査の立会いをしている中で、海外子会社との取引関係で、否認される項目のほとんどは以下の取引です。
- 海外子会社の業務を支援するための出張時の費用負担がされていない
- 海外子会社への出向者関連(給与・住宅等)の費用負担がされていない
- 海外子会社の売上に寄与するための営業支援費用の負担がされていない
なぜ、このような会社間の費用負担が問題視され、否認を受けるのでしょうか。
それは、納税者と国税局の立場と考え方の違いが影響していると思います。納税者(経営者)の立場では、海外子会社は企業グループの構成会社であり、その業績の責任は親会社が担っていると考えられている経営者が多いのではないでしょうか。
そのため、海外子会社を自社の一事業部門と考えており、親会社の社員が海外子会社へ出向・出張に際した費用を負担しているという考えが薄いと思われます。また、海外子会社が困っていたら(無償で)助けることは当然だと考えられています。
これに対し国税局は、海外子会社は「独立した企業体」として考えており、その取引は自社とは関係ない第三者の会社との取引に準じて行わなければならないと考えています。
したがって、海外子会社が困っていようと親会社の社員が業務支援で出張した場合は海外子会社にその費用を負担させる、親会社の社員が出向した場合は海外子会社に費用を負担させる事が適正だと考えています。
税務調査の際に指摘を受けないためには、出向や出張の目的と実際の行動を明確にし、どちらの会社の費用負担とする事について合理性があるのかを検証しておくことが必要です。さらに、検討結果を裏付けるためには報告書・経費清算書・会計処理が適正に行われ、保存されている事もポイントとなります。