日本で超低金利が続く現在、富裕層等はますます海外へ資産をシフトさせていますが、海外への資産フライトは何も今に始まった話ではありません。
これまでも海外の財産であれば日本の税務当局から捕捉されにくいとの思惑から、海外不動産や海外口座など様々な形で投資が行われてきました。
こういった投資家の動きに対して当局は、100万円超の国外への送金等で求められる「国外送金等調書」や、5000万円超の国外財産がある場合に提出しなければならない「国外財産調書」などで捕捉を行ってきましたが、実際の国外財産調書の提出状況を見る限り、これまでは実効性が担保されるものとはなっていませんでした。
そこで国税庁は、今回はこれらに加えて、2018年から、「共通報告基準」(CRS:Common Reporting Standard)に基づく、非居住者金融口座情報の自動的情報交換を開始しました。
この「CRS」は、租税回避の動きを阻止するために経済協力機構(OECD)が策定した新制度で、 海外にある銀行や証券、保険も含む金融口座の情報を毎年12月末時点で区切り、世界100ヵ国・地域を超える税務当局間で自動的に口座情報を交換するという仕組みです。
たとえば、日本に住むあなたがシンガポールの銀行で口座を開けたとすると、 このシンガポールの銀行は、あなたの口座情報をシンガポールの税務当局を通じて日本の税務当局へ提供することになるのです。
日本人が海外に保有する金融資産について、国税庁はどの程度捕捉しているのでしょうか。
2018年9月の初回のCRS情報交換により日本の国税庁が受領した口座情報は約55万口座と言われています。
今後、国税庁は、CRS情報を国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書など、すでに保有している様々な情報とあわせて分析していく旨を明言しており、CRS情報に基づいた税務調査が順次、開始されるものと思われます。
国税庁HP『 CRS報告コーナー|e-Tax』 https://www.e-tax.nta.go.jp/e-taxcrs/e-taxcrs0.htm