あなたの会社の社員が、海外赴任中に定年を迎えたらどうするのでしょうか。
社員が定年を迎えた場合に頭に浮かぶのは、退職金の支給ではないでしょうか。今回は、退職金の税額計算について、 国外にいる社員(以下、非居住者という)と国内にいる社員(以下、居住者という)を比べて確認していきたいと思います。
退職金に伴う税額計算
■非居住者に支払う場合の計算式
退職金額×所得税率(20.42%)…①
■居住者に支払う場合の計算式
所得税{(退職金額-勤続年数に応じた控除額)×1/2}×所得税率(累進税率)…②
住民税{(退職金額-勤続年数に応じた控除額)×1/2}×住民税率(10%)…③
納める税額は②と③の合計額
上記の計算式でお判りの通り、非居住者の場合は、「勤続年数に応じた控除額」を控除する事と「2分の1」をする事が出来ません。また、適用税率についても20.42%で固定です。
その一方で、居住者には所得税のほかに住民税がかかる事も両者の違いといえます。
したがって、同じ退職金でも非居住者と居住者とでは、かかる税金の額が違う事となります。
日本の所得税法では、非居住者の方に不利益が起こってしまう事を好ましくないと考え、退職金の税額計算方法について選択ができる事としています。
具体的には、①よりも②が税額が少ないときには、②を選択する事が出来ます。
ただし、②を選択する際には「確定申告」が必要となります。
①よりも②のほうが税額が多いときには、①の計算により納税(実際には源泉徴収による納税)を行い課税関係は完結しますので、何もする必要はありません。
非居住者の場合は、住民税がかかりませんので、税額の比較は所得税だけで行う事となります。
海外出向者の退職に際しては、会社の総務、経理部門のかたも、上記のような取扱いを理解し、出向者の方へ案内していただけるとよいかと思います。