ソフトバンクグループによる租税回避スキーム ~2020年度税制改正でどうなる~ | アタックス税理士法人 国際部

ソフトバンクグループによる租税回避スキーム ~2020年度税制改正でどうなる~

2020年4月3日

2020年度の税制改正大綱では、子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避への対応が明記され、今後は「子会社を買った時の簿価の1割を超える配当を出した場合は、その分だけ簿価を下げる」ということになり、同じような節税スキームを早々に封じ込めることになりました。

このような税制改正となった背景についてみていきたいと思います。

ことの発端は、ソフトバンクグループ(以下、SBG)が実行したあるスキームにありました。

SBGは、次の二つの会計処理の組み合わせを実行したようです。

一つ目は、「外国子会社配当益金不算入」という制度です。

配当は、課税済みの剰余金の分配ですから、外国子会社からの配当を益金に算入してしまうと、外国での法人税と日本の法人税の二重課税が生じることになるため、日本親会社が海外子会社から配当を得た場合、日本ではほぼ税金がかかりません。

SBGは、16年に約3.3兆円で英半導体設計大手アームホールディングス(以下、アームHD)を買収し、このアームHDはその子会社として事業会社のアームを所有していました。SBGが親、アームHDが子、アームが孫という構図です。

その後、SBGは18年3月期、アームHDから配当を受け取ったのですが、 この配当は現金ではなく、アームHDが持っていた大半のアーム株式で配当が行われ、SBGはほぼ税金がかからないまま、事業会社であるアーム株式を入手しました。

二つ目の会計処理は、「売却損の計上」です。

アームHDはその名の通り事業会社であるアーム株式を保有するHDです。アームHD自体の企業価値は保有するアーム株式の価値とほぼ同じでしたので、SBGに配当でアーム株式の大半を放出したことで、アームHDの企業価値は大きく目減りします。

SBGは価値が下落したアームHDの株式を、グループのソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)に「現物出資」で移動させて売却損を計上したのです。

SBGはこの損失を決算で計上して巨額の利益と相殺し、法人税を大幅に圧縮しました。

こうした手法は違法ではありませんが、意図的に赤字をつくり出す巧妙なものだったと言えます。

国税当局としては、同じような手法で節税を図られてはとの思いから今回のスピード改正となったわけです。

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