移転価格による二重課税の解消!『相互協議』とは? | アタックス税理士法人 国際部

移転価格による二重課税の解消!『相互協議』とは?

2020年4月15日

先月3月18日に、「無印良品」を展開する良品計画が中国子会社との取引をめぐって東京国税局の税務調査を受け、2017年2月期までの3年間で約75億円の申告漏れを指摘されたことが報道されました。

良品計画が中国子会社から受け取っていた商標権の使用料などを、通常より安く設定することで利益を子会社に移転していたと判断され、移転価格税制が適用されました。

移転価格税制とは、親会社子会社のような国外関連者間取引においては、独立した企業間の通常の取引価格で行われたとみなして計算する制度で、上記事案のように海外への利益移転を防ぐために導入された制度です。

これに対し良品計画は、日本と中国でこの使用料にかかる二重課税の再発を回避するため、日中の税務当局に2国間協議を申請したとのコメントを発表しています。

中国子会社からの使用料の価格が安かったということは、本来的な使用料の価格はもっと高かったということですので、自動的に中国子会社で使用料の価格を高く修正して所得の減額更正が行われれば二重課税は解消されるのですが、実際はそうはなりません。

移転価格税制は国と国の税金の取り合いという面がありますので、中国の税務当局は日本の税務当局の判断を無条件で受け入れることはないのです。

そこでこのような二重課税解消のための手続として、2国間協議(相互協議)の制度が設けられています。

相互協議とは、租税条約の規定に基づき、租税条約締約国等の税務当局間で解決を図るための協議手続です。主に、二重課税を排除することを目的として行われます。

日本における相互協議に関する事務運営指針が以下に取りまとめられています。

相互協議手続に関するガイダンス(Q&A)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/map/guidance/index.htm

相互協議におけるポイントや留意事項は以下のとおりです。

  • 租税条約の規定に適合しない課税を受け又は受けるに至ると認められる場合に行うことができます。
  • 租税条約を締結している国または地域との間でしか行うことができません。
  • 寄附金課税は基本的には相互協議の対象とはなりません。寄附金課税は租税条約の規定に適合しない課税とされてはいません。
  • 相互協議申し立てには課税処分から2年または3年以内とする期限があります。
  • 相互協議手続きの完了までには相当程度の時間がかかります(平均2年)。
  • 申立者は相互協議の申し立てを行うことはできますが、 相互協議に参加することはできません(国と国との直接の協議が行われます)。協議の進行には書類の提出だけではなく申立者から当局への情報開示や協力が必要となります。

良品計画は、再発防止もありますが、相互協議という手続きの申請を行うことにより、日本と中国の税務当局同士の話合いがまとまれば、中国で減額更正が行われ今回の二重課税が救済をされることもあわせて期待していると考えられます。

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