事業承継でやることには何がある?
どんな優れた経営者といえども不死身ではありません。
いつかは会社の経営を全うできない日が訪れますし、急病で引退せざるを得ない事態が発生するかもしれません。
後継者に完全に事業を引き継ぐ時期はまだ先のことかも知れませんが、早めに事業承継でやることをまとめて、着実に取り組んでいく必要があります。
いわゆる事業承継計画書とは、社長と後継者がやること全般をあらゆる視点からまとめたマスタープランです。
社長と後継者が、事業承継計画の立案に取り組むことで、やるべきことを整理できますし、取引先や銀行などの事業関係者からの信頼にもつながります。
計画策定の事前準備として、最初に会社や社長の現状を把握することから始めます。
以下のような点について、しっかり分析を行なう必要があります。
会社の経営資源・経営リスクについて分析する
まず、さまざまな角度から、会社が持つ経営資源や経営リスクを把握します。
会社(事業)の存続可能性から従業員や株主のことまで、できるだけ具体的に把握していきます。
具体的には、次の項目について分析することになります。
全般的事項 | ・業界のトレンド、業界の将来性の見通しはどうか ・万が一起きると大きなダメージを受けるリスクに何があるか ・外部環境、内部環境からみた自社の強み、弱みは何か |
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資産の内容 | ・資産の内容、規模、金額は適正か ・資産の中に不良化したものはないか |
負債の内容 | ・負債の内容、規模、金額は適正か ・簿外負債はないか、またその金額はいくらか |
業績の状況 | ・損益、キャッシュフローの現状と見通しはどうか ・収益性や成長性について、何か問題点はあるか |
従業員の状況 | ・従業員数、年齢構成、平均年齢はどうなっているか |
株主の状況 | ・会社の株主の氏名、関係、持株数は明確か |
社長個人の財産と債務について分析する
中小企業の事業承継は、会社の借入金の担保に社長個人の財産を提供しているなど、個人財産とも密接に関係しています。
このため、事業承継計画の策定にあたっては、社長の個人財産や債務についても検討しなければなりません。
具体的には、次の項目について分析することになります。
資産の内容 | ・社長の自社株の保有数、持株割合はどの程度か ・自社株の相続税評価額はどの程度か ・社長名義の土地、建物の利用状況はどうか、その時価はいくらぐらいか |
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負債の内容 | ・社長個人の借入金など債務の内容と金額は明らかか ・会社の債務に関する個人保証等はどうなっているか |
相続発生時に想定される課題とその解決策を検討する
事業承継に関するトラブルは、相続発生時によく起こります。
社長としては、自分の相続時に、相続人たちが争うことで事業経営に悪影響を与えることがないように手を打っておかなければなりません。
具体的には、次の項目について検討を行ないます。
- 相続人同士の人間関係は良好か
- 相続人などの自社株の保有状況は適切か
- 社長の相続財産には何があるか、またその金額はどの程度か
- 社長の相続時に予想される相続税額はどの程度か
- 相続人は相続税などの納税資金を支払えるか
後継者を検討する
後継者として適任者がいるかどうか検討します。
ここでは、社長が客観的な視点でしっかりと分析することが大切です。
具体的には、次の事項について検討を行ないます。
- 後継者としての必要な資格を吟味したか
- 親族内にふさわしい後継者がいるか
- 役員や従業員の中にふさわしい後継者がいるか
- 取引先や銀行など外部から後継者を招へいすることはできるか
- 後継者の事業経営に対する意欲、やる気はどの程度か