控除 税金

「寡婦控除」が「ひとり親控除」に生まれ変わります

投稿日:2020年8月20日 更新日:

生活様式が多様化していく中で、婚姻の形も多様化してきています。
最近ではシングルマザーという言葉もかなり当たり前に使われるようになりました。

様々な事情のもとシングルマザーの選択をされているわけですが、大変な思いをしながら懸命に頑張っておられるというのが現実であろうと思います。

そんな頑張りをバックアップするものとして、税法では「寡婦控除」という優遇規定が設けられています。

この寡婦控除という優遇規定が「ひとり親控除」に生まれ変わろうとしています。


 

そもそも寡婦控除って何?

まず、従来の寡婦控除についておさらいをしておきます。

個人のもうけである「所得」には所得税が課されます。
下記のいずれかの要件を満たした場合には、所得から27万円を差し引くことができます。

① 夫と死別又は離婚後再婚しておらず、扶養親族又は生計を一にする子供がいる方
② 夫と死別して再婚しておらず、所得が500万円以下の方

この所得から控除できる制度を「寡婦控除」と呼んでいます。

なお、所得500万円以下のシングルマザーで、子供と一緒に生活しているのであれば、「特別の寡婦」として、27万円に8万円を上乗せした35万円の寡婦控除を受けることが可能です。
 

ひとり親控除に生まれ変わる

ところで、この寡婦控除は、一度は「婚姻関係」を持った人を前提として作られており、いわゆる「未婚」のシングルマザーだと適用できないという問題を抱えていました。

そこで、令和2年度の改正により、以下のすべての要件を満たす方に対して「ひとり親控除」として所得から35万円を差し引くことになりました。

① 現に婚姻をしていない方であること。
② 生計を一にする子供がいること。
③ 所得が500万以下であること。
④ 事実上婚姻関係と同様の事情にある者がいないこと。

ただし、ひとり親控除の35万円と寡婦控除の27万円をダブルで適用できるわけではなく、ひとり親控除の35万円だけの控除となります。

つまり、「寡婦控除」のうち、上図の黄色のアミ掛けの部分が「ひとり親控除」に生まれ変わったイメージです。


 

法改正のポイント

「現に婚姻をしていない方」という規定に変わったことにより、「現時点において婚姻関係がない者」という意味に変わりました。

婚姻歴の有無が関係なくなりましたので、

  • 未婚のシングルマザーが対象に加わります。
  • 今まで死別・離婚で寡婦控除を受けていた婚姻歴のある方も「現に婚姻をしていない方」ですので対象のままです。

ひとり親控除の創設は、前述した今までの寡婦控除の問題を解消してくれたわけです。

「現に婚姻をしていない方」という表現により、未婚であっても既婚であっても不利益を被らせない規定になったことになります。
 

適用時期及び手続

ひとり親控除は令和2年分以後の所得税からの適用となります。
具体的には令和2年の年末調整及び確定申告から適用となります。

毎月のお給料から差し引かれる源泉徴収税額に反映されるのは、令和3年1月1日以後に支払われるお給料からとなります。

したがって、令和2年の年末に行われる年末調整の時には「扶養控除申告書」にひとり親控除の適用を受けるための変更記載をしておく必要があります。

年末調整の際に意思表示することで、35万円の優遇が受けられることになりますので、忘れないように注意してください。

→控除要件の詳細や、寡夫控除についてはこちらをご参照

 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 代表社員 税理士 村松 宏昭
2000年 東洋大学卒。公認会計士・税理士事務所勤務を経て、アタックスに参画。中小企業から上場会社まで幅広い顧客を担当。お客様中心主義の税務サービスを信条とし、経営者に対する財務面からの熱血指導でも定評がある。

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