新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、多くの企業でテレワーク(在宅勤務)が継続し、定着しつつあるようです。
その結果、従業員が出社しない期間が長期化するケースが見受けられます。
そのような中、気になるのが、「出社していないが通勤手当をもらっている」「この通勤手当どうなるの?」という点ではないでしょうか。
通勤手当(定期代)をもらっていながら、コロナの影響でテレワークとなり、1ヶ月の間で出社0日の人や、月数回のみ出社の人も多いかと思います。
この場合、支給された通勤手当は、今まで通り「非課税」ですむのでしょうか。
それとも、給与等として課税対象(給与課税)となってしまうのでしょうか。
非課税通勤手当の取り扱い
通勤手当が非課税となるのは?
まず、所得税法における「非課税通勤手当」は、次のように定められています。
非課税となる通勤手当は、通常の給与に加算して支給するもののうち、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額(1ヶ月当たり15万円が限度)である。
(所法9 ①五、所令20の2)
上記の限度額を超えて通勤手当や通勤定期券などが支給される場合には、超える部分の金額が給与として課税されます。
具体的には、この超える部分の金額を、支給した月の給与の額に上乗せして、所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。
非課税の前提は会社(勤務地)に通勤すること
ところで、国税局HPのタックスアンサーに通勤手当に関する記載があるのですが、
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2582.htm
このタックスアンサーが、
- 電車やバスだけを利用して通勤している場合
- 電車やバスなどのほかにマイカーや自転車なども使って通勤している場合
の2項目で説明されているとおり、「非課税通勤手当」は、電車やバス、マイカー等を利用して会社(勤務地)に通勤することを前提としています。
しかし現状はテレワークの実施により、会社に通勤しないことが多くなっています。
それでは、会社に通勤しないとどうなるのでしょうか?
コロナで会社に通勤しないと通勤手当は課税になるのか?
結論からいいますと、コロナ対策としてテレワークを実施したことにより実際に通勤した日数が0日となってしまった場合でも、これまでどおり、限度額(1ヶ月当たり15万円が限度)までは非課税として問題ないものとして取り扱われます。
この理由としては、次の2つが挙げられます。
- 一時的なテレワークの実施により会社に通勤しないとはいえ、従業員の本来の勤務地が会社であることに変更がないこと。
- テレワークの実施期間中に、従業員らが必ずしも通勤しないとは限らないこと。
つまり、従業員らの出社の可能性を踏まえた上での、一定の合理性をもって支給する通勤手当である、と捉えられているわけです。
また、会社側がテレワークの実施期間等について苦慮している状況をふまえ、
後の税務調査において、従業員らの通勤回数が僅少であることや、その期間が長期間にわたることなどを理由に、通勤手当を給与課税の対象とする指摘を行うことは想定されていない(税務通信3614号より一部抜粋要約)
と、このままテレワークが長期化した場合でも、取り扱いは同じ見解であり非課税となる、とみられています。
原則の勤務形態がテレワークの場合は注意!
ところで、非課税となる限度額(1ヶ月当たり15万円が限度)を超えるケース以外では、どのような場合に通勤手当は給与課税されるのでしょうか。
それは、「勤務地」が自宅で通勤不要にもかかわらず、通勤手当が支給される場合です。
したがって、「原則の勤務形態がテレワーク」という場合には、勤務地が自宅となり通勤自体が不要となるため、非課税通勤手当としては不適当、と判断されることが想定されます。
つまり、「原則の勤務形態がテレワーク」の場合、通勤手当の支給自体を廃止することが一般的と考えられるため、従業員らの出社の都度、交通費等として精算するなどの対応が妥当、と判断されるのではないでしょうか。
なお、「原則となる勤務地」の変更に伴い、従業員らに対して、テレワークの実施期間中に係る定期券の払戻しを促し、その払戻額を「テレワーク手当」等に代替する場合は、当然、通勤手当とはいえないため、給与等として課税対象となります。
今後の留意点
「原則テレワーク」はまだまだハードルが高く、それほど多くの会社が導入はしていませんが、「できる限りテレワークを推奨している」という企業は多いと思います。
今後、テレワークを一時的なものとするのか、恒常的なものにするのか、各社で検討が進められることと思います。
もし、テレワークを恒常的な制度とし、かつ、実際の出勤日数が少なくなりそうな場合は、交通費を実費精算する方法も検討する必要があるでしょう。
アタックス税理士法人 税理士 永持 祐司
税務顧問から個人資産家や法人オーナーの資産税業務を含めた財産コンサルティングに従事。組織再編を活用した事業承継、財産承継コンサルティングの業務を中心にプロジェクトマネージャーとして活躍中。現在、国際部副部長。