いよいよ確定申告が近づいてきました。
そこで今回は、医療費控除のギモンにQA形式でお答えしようと思います。
Q1.生計を一にする父親の医療費を支払ったときは医療費の対象にできる?
A.医療費控除の対象にできます。
医療費控除はその医療費を実際に負担した人がすることになりますが、「生計を一にしていること」と「親族であること」の要件を満たす人の医療費を負担した場合は、その負担分も含めて申告することができます。
なお、医療費控除の制度では、収入のある人が自分や扶養親族等の医療費を負担しなければならないということにはなっていません。つまり、扶養親族であるかどうかは医療費控除の要件とは関係がないのです。
そのため、例えば父親に収入があり、医療費を負担した人の扶養親族(扶養控除の対象者)になっていないとしても、問題ありません。同一生計親族であれば、実際に医療費を負担した人の医療費控除の対象となります。
Q2.人間ドックの費用は医療費控除の対象になる?
A.医療費控除の対象にはなりません。
人間ドックは治療が伴わず、単なる健康診断の費用のため、「医師又は歯科医師による診療又は治療の対価」には該当しないためです。
ただし、人間ドックによる診断の結果、病気が発見され、その病気の治療を受けることになった場合は、その人間ドックの費用も医療費控除の対象になります。
Q3.入院したときの差額ベッド代(特別室料)も医療費控除の対象になる?
A.医師の指示によって個室に入院した場合は医療費控除の対象になります。
医療費控除の対象となる医療費には、部屋代や食事代も含まれることになりますが、差額ベッド代には注意が必要です。
差額ベッド代が本人の任意によるものであれば、それは入院に「通常必要なもの」であるとは認められず、医療費控除の対象にはなりません。
医療費控除の対象となるのはあくまで「医師の指示」によって個室に入院する場合など、「医師の診療、治療を受けるために通常必要な費用」に該当する場合のみとなります。
なお、医療費控除の申告の際に、「医師の証明書」などを添付する義務はありません。
Q4.健康維持のためのマッサージ代やはり代は、医療費控除の対象になる?
A.健康維持のための費用は医療費控除の対象にはなりません。
ただし、治療のためのマッサージ代やはり代は、専門家(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律に定める施術者及びこれに準ずる者)に支払うものに限り、医療費控除の対象となります。
Q5.保険外(自由診療)で行った歯の治療費は医療費控除の対象になる?
A.歯の治療として一般的な内容であれば、医療費控除の対象となります。
医療費控除は「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」であれば、それが保険対象外であっても医療費控除の対象となります。
金歯や金冠は高額となりますが、「治療の一環として装てんされる」ものであれば、医療費控除に含めることができますし、インプラント治療の費用も同じように、治療のためであれば医療費控除の対象になります。
ただし、美容のための歯列矯正費用は「治療」ではないので、これは医療費控除の対象にはなりません。
Q6.出産に伴う費用は医療費控除の対象になる?
A.出産のための入院費用のほか、次の費用も医療費控除の対象になります。
・妊婦の定期健診費用
・不妊症の治療費
・人工授精の費用
・体外受精の費用
・助産師による分娩介助費用
・陣痛のため通院している病院へ入院するためのタクシー代
・母体保護法に基づく妊娠の中絶費用
なお、医療費控除額の計算では、支払った医療費を補填する収入があればこれを差し引くことになっていますので、出産に際して「出産育児一時金」や「生命保険契約に基づく入院費」などを受け取っていれば、これを差し引いて計算します。
ただし、「育児手当金」や、会社や親睦会からもらう「お祝金」は医療費と関係ありませんので、こうした内容のものは差し引く必要はありません。
Q7.保険外のレーシック手術を受けた費用は医療費控除の対象になる?
A.医療費控除の対象になります。
レーシック手術は保険診療の対象外ですが、その費用は視力回復のためのものであり、「医師による診療又は治療の対価」に該当します。
ちなみに、近視や老眼のメガネの購入費用は医療費控除の対象にはなりません。
Q8.新型コロナウィルス感染症に感染していないことを明らかにするためのPCR検査費用は医療費控除の対象になる?
A.陰性証明のためのPCR検査費用は医療費控除の対象にはなりません。
ただし、その検査により陽性であることが判明し、引き続き治療を行った場合には、人間ドック費用の取り扱いと同様に、医療費控除の対象となります。
Q9.入院費用を超える保険金を受け取った場合、その超えた部分の金額は他の医療費から差し引かないといけない?
A.その必要はありません。
医療費を補填する保険金等を受け取った場合には、支払った医療費の金額からその保険金等の金額を差し引くこととされていますが、この場合の差分計算は、その保険等の対象となる医療費ごとに計算するため、支払った医療費の金額を上回る部分の保険金等の額は、他の医療費の金額から差し引く必要はありません。
医療費控除の明細書を記載する際には、保険金等は「支払った医療費額のうち生命保険や社会保険などで補てんされる金額」を、支払った医療費額を上限として記入します。
(参考)「医療費控除の明細書」※2枚目に記入方法の記載があります。
アタックス税理士法人 社員 税理士 有賀 雄一
名古屋市立大学卒業後、金融機関、個人会計事務所勤務を経て、2013年アタックス税理士法人入社。主に中小企業から中堅企業までの税務顧問を担当、税務コンサルティング業務や組織再編実行支援業務等にも携わる。