少し前までは「夢のマイホーム」なんて言葉も流行りました。
人生の中で最も高額なお買い物になると言われるのが住宅の購入です。
今回は、近年改正がちょこちょこ続いている「住宅ローン控除」制度について、特に、
- 令和2年度中に住宅を購入され令和3年度に入居となる方
- これから購入される方
向けに、知らないと損してしまう税金のお話をしたいと思います。
住宅ローンの概要
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、個人が金融機関等で借入をして、住むための自宅を購入する場合に、年末の借入金残高の1%を10年間(近年、改正あり!次項ご参照)、所得税と住民税から控除できるというものです。
住宅ローン控除の対象となるには以下のような要件があります。
- 住宅の取得後6カ月以内に入居し、控除を受ける年の年末まで継続して住んでいること。
- 控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること。
(合計所得金額とは、収入から必要経費を控除した各所得の合計額のイメージで、給与収入のみの方であれば、給与所得控除額の控除後の金額となります。) - 借入金の返済期間が10年以上であること。
- 勤務先からの借入の場合には、金利が0.2%以上であること
(親族や知人からの借入は対象外です。) - 買替の方は、入居前2年と入居後4年の6年間に、買替特例や3,000万円控除等の特例を受けていないこと。
- 住宅の床面積が50㎡以上(近年、改正あり!次項ご参照)で、一部を店舗や事務所等の職場にしている場合は、2分の1以上が居住用であること。
(床面積は登記簿面積で、事務所等との併用住宅は事務所部分も含め、共有持分となっている場合も共有持分を含めて判断します。) - 中古住宅の場合は、ある程度の耐震性が求められます。
(築20年以上のものは、業者に確認してみましょう。)
近年の税制改正で要件が緩和(特例措置)
1.控除期間が13年間に
上記のように、住宅ローン控除が使えるのは10年間ですが、以下の要件を満たす場合には、13年間の控除が適用可能となりました。
- 要件1:購入した建物の消費税率10%であること
- 要件2:令和2年12月31日までに入居していること
さらに、以下の①②の場合には、入居期限が延長されています。
① 要件2の入居期限が、令和3年12月31日まで延長されるケース
契約日要件 | 入居遅延理由証明要件 | |
---|---|---|
注文住宅の新築 | 令和2年9月末まで | コロナ禍の影響により、住宅への入居が遅れたこと |
分譲住宅・既存住宅取得・増改築等 | 令和2年11月末まで | |
*入居遅延理由証明要件は、確定申告時に遅れたこと等を証する書類を提出する必要があります。 |
② 要件2の入居期限が、令和4年12月31日まで延長されるケース
契約日要件 | 入居日要件 | |
---|---|---|
居住用家屋の新築 | 令和2年10月1日から令和3年9月30日まで | 令和3年1月1日から令和4年12月31日まで |
分譲住宅・既存住宅取得・増改築等 | 令和2年12月1日から令和3年11月30日まで | |
*入居遅延理由証明要件はありません。 |
2.要件を満たせば、床面積が40㎡以上で対象に
本来、住宅ローン控除が使えるのは床面積が50㎡以上の場合ですが、
- 前項②(要件2の入居期限が令和4年12月31日まで延長されるケース)に該当し、かつ、
- 個人の合計所得金額が1,000万円以下
であれば(その他の要件は従来通り)、床面積が40㎡以上で住宅ローン控除(13年間)の適用が受けられることとなりました。
延長期間に控除できる税額は?
1年目~10年目まで
借入金残高の1%で、40万円を上限として税額控除ができます。
(つまり、借入金残高4,000万円が限度額となります。)
11年目~13年目まで
1年目~10年目までは「借入金残高の1%」でしたが、11年目~13年目に税額控除できるのは、以下のいずれか少ない金額となります。
- 借入金残高×1%
- 建物の取得価格(税抜)×2%÷3
なぜかというと、13年延長特例は、消費増税(8%→10%)分を軽減する目的の特例のため、11年目~13年目は最大でもこの増税分までしか税額控除ができないのです。増税2%分を3年で税額控除するようにしているのが「建物の取得価格(税抜)×2%÷3」という式です。
なお、「建物の取得価格」は4,000万円が上限となります(仮に6,000万円で取得していても4,000万円で計算する)。
ただし、新築・未使用の長期優良住宅、低炭素住宅の場合には5,000万円が上限となります。
(参考)個人の方から中古住宅を購入された方
個人の方から購入している場合は、消費税はかかっていませんので、そもそも13年延長特例の対象外となります。契約書で売主さん等を確認頂ければと思います。
また、通常の住宅ローン控除(1年目~10年目)も、中古住宅は借入金残高2,000万円が限度額となります(=税額控除の上限は20万円/年)。
身近な住宅ローン控除も、意外と奥の深い税制となっており、ここに記載できていないこともたくさんあります。詳しくは最寄りの税務署等でご確認ください。
アタックス税理士法人 税理士 稲木武雄
2000年 金沢大学卒。ベンチャー企業から上場会社まで幅広い会社の税務顧問業務を担当、また、組織再編成実行支援といった特殊税務や相続対策などの資産税についても幅広く対応、総合的な税務コンサルタントとして活躍するプロジェクトマネージャー。