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新型コロナウイルスに関する費用の税金と医療費控除

投稿日:2021年8月10日 更新日:

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて、ワクチン接種が進められています。
高齢者から接種が始まり、現在は職場や大学などで実施する職域接種も進められています。

そんな中7月2日に国税庁が、新型コロナFAQを更新し、新型コロナウイルス感染症に対する代表的な支出や経済的利益についての課税関係が明らかにされました。

今回はこの新型コロナFAQのうち代表的な内容を一緒に見ていきたいと思います。


 

ワクチン接種に関係する費用

ワクチン接種自体の費用

私たちは希望すればワクチン接種を受けることができます。

ワクチン接種をしてもらうためには、ワクチンそのものの代金や接種会場の使用料、接種会場の運営費や医師・看護師の方々の派遣費用など、実に多くのお金をかけて接種してもらっています。

しかも、私たちは無料でワクチン接種をしてもらえますから、経済的利益を受けていることは事実です。

新型コロナワクチンの接種については、予防接種法という法律に基づき「市町村において実施」することが定められています。

市町村において実施とは、被接種者に負担させるべき費用はない、ということを意味しています。

そのため、無料でワクチン接種を受けても(つまり、その分の経済的利益を受けていても)、ワクチン接種自体の費用は、所得税の課税対象とはなりません


 

接種会場までの交通費

職域接種を受ける人は、接種会場が職場とは別の場所ということも考えられます。

勤務先又は自宅から接種会場までの交通費は所得税法上、どのように取り扱われるのでしょうか。

所得税法では、職務命令に基づき移動を必要とする場合に、その移動に通常必要とされる旅費の範囲内であれば、その旅費には所得税を課さない旨が定められています。

職域接種のために接種会場まで移動した際の交通費については、職務命令に基づく旅費と同様と考えられますので、接種会場への交通費として相当な額であれば、所得税の課税対象とはなりません

デジタルワクチン接種証明書の取得費用

職域接種の受託形態によっては、希望者に有料でデジタルワクチン接種証明書の交付を受けることができるものもあります。

業種柄、証明書を必要とする人もたくさんいると思います。

今回の新型コロナFAQの更新で、業務上の必要性があるため、会社が証明書の取得費用を負担した場合、その費用は業務上の必要経費として会社の費用に認められることが明らかにされました。

これにより会社の業務経費ということが明確になりましたので、社員の給与課税とはならず、所得税の課税対象とはならないこととなります。


 

新型コロナ対策費用と医療費控除との関係

つぎに、新型コロナ対策費用と医療費控除との関係をみていきます。

所得税の計算上、課税対象から控除することのできる項目として医療費控除があります。

医療費控除の対象となる医療費は、

  1. ① 医師等による診療や治療のために支払った費用であること
  2. ② 治療や療養に必要な医薬品の購入費用であること

が求められます。

マスク購入費用

新型コロナウイルス感染症の予防のため、マスクは必要不可欠なアイテムとなっています。

ただ、マスクは病気の感染予防を目的に着用するものであり、その購入は上記の①②のいずれの費用にも該当しないため、医療費控除の対象とはなりません
 

PCR検査費用

新型コロナウイルス感染症に罹患している疑いのある方に対して実施するPCR検査など、医師等の判断に基づき実施したPCR検査の検査費用は、上記①の費用に該当するため、医療費控除の対象となります。

一方、新型コロナウイルス感染症に罹患していないことを明らかにするためのPCR検査など、自己の判断に基づき実施したPCR検査の検査費用は、上記①②のいずれの費用にも該当しないため、医療費控除の対象とはなりません

ただし、自己判断のPCR検査から陽性が判明した場合には、その検査は治療に先立って行われるものと同様と考えられることができるため、この場合の検査費用は上記①の費用に該当し、医療費控除の対象となります。
 

オンライン診療に係る費用

医療機関によっては、新型コロナウイルス感染症の感染予防として、対面ではなくオンライン診療を導入しているところもあります。

この際の費用項目についても新型コロナFAQにおいて取扱いが明らかにされました。

オンライン診療代やオンラインシステム利用料については、対面診療に代替するために必要となる診療行為費用であるため、上記①の費用に該当し、医療費控除の対象となります。

処方された医薬品の購入費用は、上記②の費用に該当し、医療費控除の対象となります。

しかし、処方された医薬品の配送料については、上記の①②のいずれの費用にも該当しないため、医療費控除の対象とはなりません

このように、医師等の診察に伴う費用か否か、その診療に基づき購入した医薬品であるか否かを判断の軸としていくことが新型コロナFAQにおいて明示されることとなりました。
 

終わりに

新型コロナウイルス感染症は、まだまだ終わりが見えず、罹患の不安と闘わざるを得ない毎日が続いています。

まずは、感染症対策をしっかりと行い、健康を守ることが第一です。
政府は緊急的対応を余儀なくされていますので、FAQなどを用いて法的な考え方を順次後から出してくると思います。

感染症が落ち着いたときに、取扱いでバタバタしては時間の無駄になってしまいます。
更新情報にも目を向けるきっかけとなって頂ければと思います。

(参考)国税庁HP「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ
 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 代表社員 税理士 村松 宏昭
2000年 東洋大学卒。公認会計士・税理士事務所勤務を経て、アタックスに参画。中小企業から上場会社まで幅広い顧客を担当。お客様中心主義の税務サービスを信条とし、経営者に対する財務面からの熱血指導でも定評がある。

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