「資金運用を始めてみたい」「セカンドライフに備えていきたい」「教育資金を準備したい」など、お金を少しずつでも運用に回していくことを考える人も少なくないと思います。
そうした中、NISAという制度が広く知られていますが、具体的な内容はよく分からないという人も多いのではないでしょうか。
今回はそんな皆さんのために、NISAがどのような制度なのかをテーマに、現在の制度と改正後の制度の双方を一緒に見ていきたいと思います。
1.NISA制度の概要
通常、株や投資信託などの金融商品を投資運用した場合、その売却益や配当などの収受利益に対しては、約20%の税金がかかります。
ですが、NISAを活用すると一定の金額までは税金がかからなくなります。
このNISAという制度は
「NISA口座(非課税口座)内で購入したこれらの金融商品については、一定金額の範囲内での購入に限り、そこから得られる利益を非課税とする制度」
であるといえます。
2.NISAの種類
NISAは、成年が利用できるものと未成年が利用できるものとに大別されます。
成年が使えるNISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類があり、未成年が使えるものには「ジュニアNISA」がありますので、全部で3種類のNISAが存在していることになります。
①一般NISA
株式や投資信託等を「年間120万円」まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。
120万円を5年間分非課税として利用できますので、仮に5年間、限度額まで投資すれば、最大600万円分の金融商品を非課税で保有することが可能になります。
②つみたてNISA
一定の投資信託を「年間40万円」まで購入でき、最大20年間非課税で保有できます。
毎月積立で購入できるため、少額から投資することが可能になります。また、40万円を20年間分非課税として利用できますので、仮に20年間、限度額まで投資すれば、最大800万円分の金融商品を非課税で保有することができるわけです。
③ジュニアNISA
株式や投資信託等を「年間80万円」まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。
ジュニアNISAについては改正により、新規の口座開設が2023年までとされ、2024年以降は新規購入ができない(非課税の取扱いとはならない)こととされました。現在はまだ非課税として利用することができますが、来年の購入までで制度終了となります。
3.NISAの非課税枠
一般NISAでもつみたてNISAでも年間購入上限の違いはありますが、その範囲内の投資利益はすべて非課税とされます。
投資利益には売却のケースと配当などのケースがあります。
①売却による利益
NISAでは、購入した時より値上がりして売却益を手に入れたとしても、「購入上限枠内のもの」の売却益は非課税となります。
例えば一般NISAであれば、120万円で購入した株式を150万円で売却したとしても譲渡益の30万円に課税がされないということとなります。
- 非課税枠の120万円については、1年の間での購入であれば、数回に分けて株などを購入することも可能です。
- 上限120万円まで購入しなかった場合、残った非課税枠を翌年に繰り越すことはできません。翌年の非課税枠は120万円となりますのでご注意ください。
- 120万円分購入し、同じ年に100万円分売却したからといって、その年の購入分が20万円になるわけではありません。売却部分の再利用のようなことはできませんので、この点も注意しておいてください。
②配当などの分配利益
購入した後、配当金などの分配を受ける際にも、非課税で受取ることができます。
例えばつみたてNISAであれば上限枠を購入し続けたとすれば、毎年40万円ずつ投資資産が増えていきます。
この投資資産の運用益として分配されてくる利益が、最大20年間も非課税で受け取ることが可能になります。
(補足)確定申告は不要
もちろん譲渡益でも分配益でも、NISAを活用して得た利益は非課税の扱いですので確定申告をする必要がありません。
4.2024年から始まる新しいNISA
2023年に終了予定であった一般NISAは、内容を見直したうえで2028年まで5年間延長されました。
2023年までのNISAと、見直し後の2024年からのNISAについてまとめると、以下の通りとなります。
2023年までのNISA
NISA(20歳以上) | ジュニアNISA(20歳未満) | ||
---|---|---|---|
一般NISA | つみたてNISA | ||
制度開始 | 2014年1月から | 2018年1月から | 2016年4月から |
非課税保有期間 | 5年間 | 20年間 | 5年間 ※ただし、2023年末以降に非課税期間が終了するものについては、20歳まで非課税で保有を継続可能。 |
年間非課税枠 | 120万円 | 40万円 | 80万円 |
投資可能商品 | 上場株式・ETF・公募株式投信・REIT 等 | 長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託 ※金融庁への届出が必要 |
一般NISAと同じ |
買付方法 | 通常の買付け・積立投資 | 積立投資(累積投資契約に基づく買付け)のみ | 一般NISAと同じ |
払出し制限 | なし | なし | あり(18歳まで) ※災害等やむを得ない場合には、非課税での払出し可能。 |
備考 | 一般とつみたてNISAは年単位で選択制 2023年1月以降は18歳以上が利用可能 |
2023年末で終了 |
2024年からのNISA
NISA(18歳以上) | ||
---|---|---|
新しいNISA | つみたてNISA | |
制度開始 | 2024年1月から | 2018年1月から |
非課税保有期間 | 5年間 | 20年間 |
年間非課税枠 | 2階部分:120万円 1階部分:20万円 |
40万円 |
投資可能商品 | 2階部分:上場株式・ETF・公募株式投信・REIT 等 1階部分:つみたてNISAと同様 |
長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託 ※金融庁への届出が必要 |
買付方法 | 2階部分:通常の買付け・積立投資 1階部分:つみたてNISAと同様 |
積立投資(累積投資契約に基づく買付け)のみ |
払出し制限 | なし | なし |
備考 | 新しいNISAとつみたてNISAは年単位で選択制 |
現行の一般NISAは、投資上限120万円という枠内であれば、特段の制限なく投資できますが、新しいNISAは、投資枠を1階部分と2階部分に分けて設計がなされました。
1階部分の非課税枠が20万円で、2階部分が102万円の年間計122万円に改正されます。
1階部分という表現のとおり、新しいNISAを活用するためには、先ず20万円の枠内で投資信託を選択しなければなりません。
その後に102万の枠内(2階部分)で株式や投資信託を自由に投資することが可能になります。
つまり新しいNISAは、つみたてNISAの性質と現行の一般NISAの性質を掛け合わせたような制度に生まれ変わったといえます。
改正が加わりはしましたが、根本が大きく変わるような変更ではないといえます。
資産運用を考える方は、今回お伝えした非課税枠を上手に使って損のないプランニングをしてみることも有用かもしれません。
アタックス税理士法人 代表社員 税理士 村松 宏昭
2000年 東洋大学卒。公認会計士・税理士事務所勤務を経て、アタックスに参画。中小企業から上場会社まで幅広い顧客を担当。お客様中心主義の税務サービスを信条とし、経営者に対する財務面からの熱血指導でも定評がある。