所得控除の基本(1)に続き、
以下の所得控除のうち、
2.配偶者控除(配偶者特別控除を含む)
3.扶養控除
4.勤労学生控除
5.寡婦控除・ひとり親控除
6.障害者控除
7.医療費控除
8.寄付金控除
9.雑損控除
10.社会保険料控除
11.生命保険料控除
12.地震保険料控除
13.小規模企業共済等掛金控除
今回は、4.勤労学生控除、5.寡婦控除・ひとり親控除、6.障害者控除について説明します。
今回説明する控除は、学生でありながら働かなければいけなかったり、シングルマザーであったり、障害を抱えていたりと、客観的に見て「大変な人」の負荷を考慮して、一定の控除を認めるものです。
意外に一般の方には認知度が低く、漏れているケースも多いので、丁寧に確認していきましょう。
なお、前回の所得控除の基本(1)では、所得控除全体に関わる大切な概念の説明をしていますので、読んでいない方は、是非、一読の上、今回のお話を見ていただければと思います。
4.勤労学生控除
学生でありながら、働くということは大変なことです。
そんな方のために設けられている控除です。
給与収入が103万円以上ある等で親族の扶養に入れない場合には(扶養控除については所得控除の基本(1)を参照)、自分の税金を安くできないか検討してみる必要があります。
要件
その年の12月31日現況で、次の3要件のすべてを満たす納税者であれば控除が受けられます。
(要件1) 給与所得などの勤労による所得があること
当然のことながら、働いてもらったお金があるということです。
親からの仕送り収入等は所得に含めません。
(要件2) 年間の合計所得金額が75万円以下(令和元年分以前は65万円以下)で、勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
- 給与収入のみの方は、130万円以下の収入で該当します。
※給与収入には給与所得控除(55万円/令和元年分以前65万円)があるため。
(給与収入130万-55万=75万円 ←これが所得) - アルバイト等以外の株などで得た収入が10万円以下である必要があります。
- 株式等の譲渡がある場合等には、合計所得金額の見方が少し難しいので、以下でご確認ください。
(参考)合計所得とは?:国税庁HP No.1170 寡婦控除 2(2)の(注)参照
(要件3) 特定の学校の学生、生徒であること
小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校に通っている人、専修学校に通っている人や職業訓練を受けている人でも控除の対象になりえます。
控除の対象になる学校か否かは、通学している学校の窓口で確認していただくのが間違いありません。
(参考)特定の学校とは?:国税庁HP No.1175 勤労学生控除 2(3)参照
手続き
- 会社勤めで年末調整をする方は、「扶養控除等申告書」に必要事項を記載して、勤務先に提出してください。
- 確定申告をする方は、「確定申告書」に必要事項を記載して提出してください。
- また、一定の学校法人や職業訓練法人等において、一定の課程を履修することで該当する場合には、証明書の交付を受けて添付する必要がありますのでご留意ください。
控除金額
区分 | 控除額 |
---|---|
勤労学生控除 | 27万円 |
5.寡婦控除・ひとり親控除
沢山の年末調整や確定申告を見てきましたが、個人的には一番忘れられていると感じる控除です。
一般の方には理解しにくい控除なのかもしれません。
ご自身が該当しないか、親族や友人等が該当していないか、ここで確認してもらえればと思います。
(注)ひとり親控除は(2)ひとり親控除をご覧ください。
5 -(1)寡婦控除
要件
その年の12月31日現況で、「ひとり親」に該当せず、次のAかBのいずれかに当てはまる人です。
A:夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
- 夫とは、民法上の婚姻関係にある者をいいます。
- 給与収入のみの方は、収入が約677万円以下で合計所得金額500万円以下に該当します。
B:夫と死別した後婚姻していない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
- 給与収入のみの方は、収入が約677万円以下で合計所得金額500万円以下に該当します。
控除金額
区分 | 控除額 |
---|---|
寡婦控除 | 27万円 |
5 -(2)ひとり親控除
令和2年分から、婚姻歴の有無や性別にかかわらず、納税者がひとり親であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。
要件
ひとり親とは、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと又は配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3要件のすべてに当てはまる人です。
(要件1) その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
- いわゆる事実婚状態の場合には、控除を受けることはできません。
- 事実婚状態であるかどうかは、住民票の記載で判断します。
(要件2) 生計を一にする子がいること
この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
(要件3) 合計所得金額が500万円以下であること
- 給与収入のみの方は、収入が約677万円以下で合計所得金額500万円以下に該当します。
控除金額
区分 | 控除額 |
---|---|
ひとり親控除 | 35万円 |
令和元年分以前は、改正前の寡婦(寡夫)控除を適用することになります。
・改正前の寡婦控除とは?:国税庁HP No.1170 寡婦控除 4~6参照
・寡夫控除とは?:国税庁HP No.1172 寡夫控除参照
6.障害者控除
納税者自身、同一生計の扶養配偶者や扶養親族が、障害者である場合に受けることができる控除です。
障害者の範囲
障害者とは、所得税法に規定する障害者で、各種機関等で障害者の手帳を交付されている人や認定や判定を受けている人です。
また、以下の方は、特別障害者として控除額が大きくなります。
(同居をしている場合には、更に控除額が大きくなります。)
- 身体障害者手帳に1級又は2級と記載されている人
- 精神障害者保険福祉手帳に1級と記載されている人
- 精神保健指定医の判定による重度の知的障害者
- 市町村長等から特別障害者に準ずるものとして認定されている人
- その年の12月31日現況で、引き続き6か月以上にわたって、身体の障害により寝たきりの状態で、自ら排便等をできない等の複雑な介護を要する人
障害者の範囲を具体的に確認したい方は、下記をご確認ください。
(参考)障害者の範囲とは?:国税庁HP No.1160 障害者控除 2参照
控除金額
区分 | 控除額 |
---|---|
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
今回はここまで。
所得控除はボリュームがありますので、5回に分けてお話しています。下記もどうぞ。
1回目:所得控除の基本(1)~基礎控除、配偶者控除、扶養控除とは?
2回目(このページ):所得控除の基本(2)~勤労学生控除、寡婦控除、障害者控除とは?
3回目:所得控除の基本(3)~医療費控除とは?
4回目:所得控除の基本(4)~寄付金控除、雑損控除とは?
5回目:所得控除の基本(5)~社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除とは?
※本稿は基本的な内容を記載していますので、
例外的な対応など気になることがある場合は、最寄りの税務署にお問い合わせください。
アタックス税理士法人 コンサルタント 宮田 香菜子
2003年 茨城大学卒。中小企業から上場企業まで幅広い法人の税務顧問業務を担当。また、組織再編や資産税などの特殊税務業務にも携わる。