最近ではスマートフォン一つあれば、いつでも誰でも簡単にネットオークションを楽しむことができるようになりました。
特にフリマアプリ大手のメルカリを利用して不用品などを処分し、収入を得ている人も少なくないのではないでしょうか。
収入が多くなればなるほど嬉しいものですが、ここで気になるのが税金の取扱いです。
メルカリで得た収入について、確定申告をする必要はないのでしょうか?
今回はメルカリで得た収入と税金の関係について説明させていただきます。
確定申告とは?
まずは確定申告について簡単に説明しておきたいと思います。
確定申告とは個人が1年間で得た所得に対して、自身で所得税を計算する手続きのことを言います。
なお、会社員やアルバイトなど給与しか収入がない方は、年末に勤務先が税金の計算をしてくれますので、基本的に確定申告は不要となります。この手続きを年末調整と言います。
ただし、年末調整により税金の計算が完了している方でも、給与以外の副収入による所得が年間20万円を超える場合などは確定申告の義務が生じることになるため注意が必要です。
収入と所得?
「収入」と「所得」、似たような言葉ですが、少しわかりづらいので補足しておきます。
収入とはいくらお金が入ってきたかで、会社でいうと売上にあたります。
所得とはいくらお金が残ったかで、売上から経費を差し引いた会社でいうと利益にあたります。
例えば、1,000円で購入した服を1,500円で売った場合、収入は1,500円、所得は500円(1,500円-1,000円)となります。
確定申告が必要となるのは、利益である所得が年間20万円を超えた場合ですので、仮に所得がマイナス(赤字)であるような場合には申告の必要はありません。
メルカリでの所得に対する税金は?
上記が確定申告の基本的な考え方ですので、メルカリで得た所得が年間20万円を超えるかどうかがポイントになりますが、結論から言うと、メルカリで得た所得に対して所得税がかかるケースは少ないものと思われます。
なぜ、税金がかからないのでしょうか。
理由はメルカリでの販売は、以下の2つに該当する可能性が高いからです。
生活用物品の処分なら非課税(理由1)
所得税法では、生活用物品の売却は非課税とされています。
生活用物品の代表例は、衣服、家具、自家用車などで、生活をするうえで欠かせないものを言います。
メルカリではこうした生活用物品を売却している人が多いため、所得税がかかるケースは少ないと考えられます。
ただし、これとは異なり、貴金属、宝石、書画骨董などで1個当たり30万円を超えるような高価な物品については、生活にあまり関係のないものとして所得税の課税対象とされています。
そのため、通常は生活用物品と考えられるCDや本などでも、希少価値が高く、1個当たり30万円を超える値段が付くようなものは課税対象になる可能性がありますのでご注意ください。
営利目的ではないと判断されれば非課税(理由2)
生活用物品の売却は非課税とされていますが、これらの行為が継続的・反復的に行われており、利益を得ることを目的としているような場合には、所得税の課税対象となります。
しかしながら、おそらくメルカリ利用者の多くは、自身の衣服や家具などがいらなくなったときに、これらの処分を目的としてサービスを利用することがほとんどだと思いますので、基本的にはその売却で得た所得に対して所得税はかからないものと思われます。
非課税にならない(税金がかかる)場合の計算方法は?
それでは、もし、非課税とならずに課税対象になってしまった場合、税金はどのように計算されるのでしょうか。
課税対象となるのは、上記(非課税となるケース)の逆になりますので、(1)生活用物品に該当しない場合、(2)営利目的と判断される場合、の二つのケースとなります。
(1) 生活用物品に該当しない場合(税金がかかる)
生活用物品に該当しない場合は、個人の所得のうち「譲渡所得」に該当し、物品の保有期間に応じ、短期譲渡所得か長期譲渡所得に区分されたうえで総合課税の対象になります。
ちなみに「総合課税」とは、各種の所得を合計して所得税を計算する課税方式です。税率は累進課税方式がとられており、合計所得が多ければそれだけ税率も高くなります。
なお、譲渡所得でも、株式、投資信託、債券や土地、建物などの譲渡益は金額が高額となるため、他の所得とは分離して課税する「分離課税」といわれる方式で税金が計算されます。
話を元に戻しましょう。
生活用物品に該当しない場合の税額計算は、以下のようになります。
短期譲渡所得※1=短期譲渡所得の収入金額※2-(取得費※3+譲渡費用※4)
長期譲渡所得※1=長期譲渡所得の収入金額※2-(取得費※3+譲渡費用※4)
※1 短期譲渡所得とは、譲渡するまでの保有期間が5年以下だった物品の譲渡所得、長期譲渡所得は保有期間が5年超を言います。
※2 メルカリでの売却金額を言います。
※3 物品の購入費用などを言います。
※4 メルカリで売るためにかかった費用を言います。(インターネット代など。)
譲渡所得=短期譲渡所得+長期譲渡所得×1/2-特別控除50万円
つまり、譲渡所得の場合には、50万円の特別控除があるため、少なくとも所得が50万円以上でない場合には税金はかからないことになります。
(もし長期譲渡所得だけであれば、所得が100万円以上でなければ税金はかからないことになります。)
なお、総合課税の対象となりますので、この譲渡所得のほか各種の所得を合計し累進課税方式で税額が計算されることとなります。
(2) 営利目的の場合(税金がかかる)
メルカリでの販売が継続的・反復的に行われており、利益を得ることを目的(営利目的)としているような場合、その販売が事業的規模かどうかにより、以下のいずれかに区分され、所得税がかかることになります。
a) メルカリでの取引が「事業的規模である」場合
個人の所得のうち「事業所得」に該当し、総合課税の対象になります。
その計算は、基本的に譲渡所得と同様、収入からかかった経費を差し引いて行いますが、譲渡所得のような特別控除の優遇措置はありません。ただし、青色申告の選択を行うことでいくつかの税制上の優遇措置を受けることが可能となります。
また、事業的規模かどうかの判断は、取引状況などを考慮して行いますが、例えばメルカリでの販売収入で生計を立てているような場合などは事業的規模と言えそうです。
ただ、実際にはそういった方はそれほど多くないと思いますので、メルカリでの所得を事業所得として確定申告するケースはほとんどないものと思われます。
なお、事業所得に該当する場合、事業で生じた損失(赤字)があるときは給与所得などの他の所得と損益通算(一定期間内の利益と損失を相殺すること)が可能になります。
b) メルカリでの取引が「事業的規模でない」場合
個人の所得のうち「雑所得」に該当し、総合課税の対象になります。
例えば、週末だけメルカリを利用するなどの場合には、事業的規模とは言えないため、雑所得に該当するものと思われます。
計算方法は、基本的には事業所得と同様ですが、青色申告の制度はありません。
また、雑所得に該当する場合には、損失が生じたとしても、残念ながら給与所得などの他の所得との損益通算はできません。雑所得内での損益通算は可能です。
「事業所得」「雑所得」のいずれも総合課税の対象となりますので、各種の所得を合計し累進課税方式で税額が計算されることとなります。
まとめると・・
よほど熱心にメルカリを利用している方以外は、税金の心配はしなくてよいと思われますが、場合によっては税金の対象になる方もいるかもしれません。
ご自身の状況をしっかりと確認し、くれぐれも申告漏れがないようにお気を付けください。
所得税のことをもっと知りたい方は、個人の所得税を少しでも抑える対策とは?~損益通算を活用してみよう編~ もお読みください。
アタックス税理士法人 税理士 長沢健史
2001年 法政大学卒。主に中堅企業から上場企業に対する税務顧問、税務コンサルティング業務に従事。企業再生支援業務等にも携わる。組織再編、連結納税等の手法を利用したタックスプランニング、資本政策の策定に強みを持つ。