令和2年分の確定申告では、東京国税局管内で所得税等を申告した609万3千人のうち、e-Tax(申告書等を電子データの形式でインターネットを通じて提出する方法)を利用した人は、235万5千人(対前年比+30.4%)でした。
うち、税理⼠の代理送信を除いた、納税者⾃⾝が⾃宅からe-Taxで申請した数は114万人(対前年比+55.6%)で、いずれも、前年に比べて大幅に増加しています。
ただ、残りの60%以上の人は、まだ書面の持参または送付により確定申告してますので、e-Taxによる申告は十分に浸透していないのが現状です。
そんなe-Taxですが、実はパソコンだけでなくスマホから申告できるってご存じでしょうか?
そこで今回は、スマホでe-Taxを利用する方法の概要をご紹介します。
e-Taxによる確定申告のメリット
まず、基本的な知識として、e-Taxのメリットには以下のようなことがあります。
- どこでもネットから申告が可能
税務署窓口や確定申告会場で申告書を作成・提出したり、郵送の手続きをしなくても、パソコンかスマホがあればネットで提出することができます。 - 添付書類の提出を省略できる場合がある
e-Taxの場合、源泉徴収票や医療費の領収書、寄付金控除・保険料控除の証明書の添付を省略することができます。
ただし、原則として法定申告期限から5年間保管する必要があります。 - 書面での申告より還付が早い
e-Taxで提出された還付申告は、不備がなければ3週間程度で還付金が振り込まれ、書面での申告より早くなります。 - 24時間受付
申告期間中は24時間e-Taxの利用・申告が可能ですので、忙しい方にはおすすめです。 - 電子納税にも対応
e-Taxでは、スマホやご自宅等のパソコンなどから、インターネットバンキングなどで納付ができるため、銀行に行く必要がありません。
(参考)国税庁 令和2年確定申告特集HP「e-Taxならこんないいこと」
スマホ専用画面を利用して申告できる人・できない人
ここからは、スマホによるe-Taxの利用方法について解説していきます。
パソコンとスマホでは申告できることに若干の違いがあり、スマホ専用画面から申告できる内容は以下となっています。
内容 | |
---|---|
収入 | 給与所得 |
雑所得 | |
一時所得 | |
所得控除 | 全ての所得控除 |
税額控除 | 政党等寄付金特別控除 |
災害減免額 | |
その他 | 予定納税額 |
本年分で差し引く繰越損失額 |
したがって、事業所得や不動産所得など上記以外の所得がある人は、現状ではスマホ専用画面では申告できません。
なお、ふるさと納税による還付申告などにはスマホ専用画面も十分対応できる仕様になっています。
スマホでe-Taxにより確定申告する方法
スマホを利用してe-Taxで申告する方法は、大きく分けて「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2つがあります。
マイナンバーカード方式
マイナンバーカードをお持ちの方は、この方式がおすすめです。
マイナンバーカード方式とは、マイナンバーカードを使って、e-Taxへログインして申告する方式です。
マイナンバーカードの読み取りに対応したスマホに、マイナポータル(※)アプリをスマホにインストールする必要があります。
通常、e-Taxを利用するためには、事前に税務署長へ届出をし、e-Tax用のID・パスワードの通知を受け、これらを管理・入力する必要がありますが、マイナンバーカード方式では、そのような手続きが不要となります。
また、e-Taxを利用するための事前準備として必要となる電子証明書の登録も不要です。
マイナンバーカードをお持ちでない方は、お住いの市区町村で交付申請ができます。
申請方法は、都道府県・市区町村が共同して運営する地方公共団体情報システム機構(J-LIS)マイナンバーカード総合サイトを参照してください。
なお、交付通知書が発送されるまで通常1か月程度のところ、現在は2か月程度かかるそうですので、余裕をもって手続きを行いましょう。
マイナンバーカード方式の、手続きやログイン方法は国税庁のサイトで丁寧に解説されていますので、こちらをご参照ください。
e-TAX国税庁HP「マイナンバーカード方式について」
ID・パスワード方式
マイナンバーカードをお持ちでない方は、ID・パスワード方式でe-Taxにより申告することができます。
ID・パスワード方式は、本人確認を税務署で行うか、またはマイナンバーカードを利用して、「利用者識別番号」を取得し、e-Taxにログインする方法です。
そのため、マイナンバーカードをお持ちの方はマイナンバーカード方式の方が手続きは省略されます。
ID・パスワード方式も利用者識別番号取得時に本人確認をしていますので、電子証明書の登録は不要です。
なお、ID・パスワード方式は、マイナンバーカード及びICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応になりますので、 マイナンバーカードの取得も検討してみてください。
ID・パスワード方式も、国税庁のサイトで丁寧に解説されていますので、詳しくはこちらをご参照ください。
e-TAX国税庁HP「ID・パスワード方式について」参照
マイナポータルとの連携
スマホを利用したe-Taxの2つの方式について解説しましたが、特にマイナンバーカード方式には他にもメリットがあります。
たとえば、マイナポータルと連携することで、生命保険料の控除証明書などの情報をまとめて入手し、各控除に自動入力できるため、申告書の作成時間が短縮されます。
また、今後もマイナポータルとの連携が拡大していく予定となっており、スケジュールは以下のとおりとなっています。
時期 | 連携内容 |
---|---|
令和2年分から自動入力 | 住宅ローン関係 |
株式等の取引関係 | |
生命保険控除証明 | |
令和3年分から自動入力予定 | 医療費関係 |
ふるさと納税 | |
地震保険控除証明 | |
令和4年分以降順次拡大予定(例) | 社会保険 |
源泉徴収票 | |
その他 | |
(注)上記はすべて、保険会社等の控除証明書等の発⾏主体がマイナポータル連携に対応していることが必要です。 |
(参考)国税庁HP「確定申告×マイナポータル 申告書の自動入力始まります!」
まとめ
確定申告の時期になると、忙しいなか時間を作って作業されている方が多いかと思います。
e-Taxのマイナンバーカード方式では、初年度はマイナンバーカード取得やマイナポータルアプリをスマホにインストールする必要がありますが、翌年度以降は事前準備は不要になります。
また、マイナポータルとの連携により自動入力できる項目も順次増えていますので、入力する手間が省けます。
ぜひ来年の確定申告はスマホからe-Taxでチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
執筆:アタックス税理士法人 税理士 大山 智史
監修:アタックス税理士法人 社員 税理士 長沢 健史