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贈与税が非課税となる「教育資金の一括贈与」は相続税に影響する?~教育資金贈与と相続税の関係を解説します

投稿日:2023年8月23日 更新日:

祖父母が孫に対して、贈与税が非課税となる「教育資金の一括贈与」をした後に、その祖父母に相続があった場合には、生前に教育資金贈与をしたことが祖父母の相続税にどう影響するのかご存知でしょうか。

この点については、これまで何度も税制改正が行われており、非常に分かりにくくなってきています。

そのため、今回はこの贈与税が非課税となる「教育資金の一括贈与」が相続税にどのように影響するのかについて、解説していきます。


 

1.そもそも、教育資金贈与制度が創設された趣旨は何か

夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から、生活費や教育費として必要な都度取得した財産で、通常必要と認められるものについては、贈与税はかからないこととなっています。

しかし、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを今後の生活費や教育費に充てるために貯金している場合などは、「必要な都度」贈与を受けたものには該当しないため、その贈与資金には贈与税がかかってしまいます。

そこで、教育資金については、教育資金目的で使用される限りは生前に一括贈与しても贈与税が課税されることのないように、平成25年度税制改正において「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」措置が創設されました
 

2.教育資金贈与の非課税措置はどのような制度か

(1)制度の概要

教育資金に充てるために受贈者の直系尊属(両親、祖父母等)から金銭等の贈与を受けた場合に、受贈者ごとに1,500万円までの金額については贈与税が非課税となる制度です。

(2)手続き

取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出する必要があります。

(3)対象者

30歳未満の方。

(4)適用できる期間

平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に贈与を受けたもの。

(5)契約が終了した場合の残額の扱い

受贈者が30歳に達したときに、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額があるときは、その残額はその契約終了時に贈与があったこととされます
 

3.契約期間中に贈与をした直系尊属が死亡した場合の相続税はどうなるか

前項(2-(5))では契約が終了した場合の残額の扱いに触れましたが、それでは、契約期間中に贈与者が死亡した場合はどうなるのでしょうか?

(1)平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に贈与を受けたもの

相続財産に加算されるものはありません。
 

(2)平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間に贈与を受けたもの

贈与者が贈与をした日から3年以内に死亡した場合には、一定の管理残額()を、贈与者から相続等により取得したこととされます。

ただし、贈与者の死亡日において受贈者が以下に該当する場合には、相続等によって取得したものとはみなされません。
① 23歳未満である場合
② 学校等に在学している場合
③ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合
 

(3)令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に贈与を受けたもの

贈与者が死亡した場合には、一定の管理残額()を、贈与者から相続等により取得したこととされ、相続税の2割加算の対象(対象者はコチラで確認ください)となります。

ただし、贈与者の死亡日において受贈者が以下に該当する場合には、相続等によって取得したものとはみなされません。
① 23歳未満である場合
② 学校等に在学している場合
③ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合
 

(4)令和5年4月1日以後に贈与を受けたもの

贈与者が死亡した場合には、一定の管理残額()を、贈与者から相続等により取得したこととされ、相続税の2割加算の対象(対象者はコチラで確認ください)となります。

ただし、贈与者の死亡時における相続税の課税価格が5億円以下であり、かつ、贈与者の死亡日において受贈者が以下に該当する場合には、相続等によって取得したものとはみなされません。
① 23歳未満である場合
② 学校等に在学している場合
③ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合
 

※管理残高

管理残高は取扱金融機関の営業所等で確認できますが、以下のように計算されます。

管理残高=(A-B)×C/D
A=贈与者が死亡した日における教育資金管理契約に係る非課税拠出額
B=贈与者が死亡した日における教育資金管理契約に係る教育資金支出額
C=死亡した贈与者から取得した信託受益権又は金銭等(注)のうち、「教育資金の非課税」の特例の適用を受け、贈与者の課税価格に算入しなかった金額に相当する部分の価額
D=贈与者が死亡した日における教育資金管理契約に係る非課税拠出額

(注)次の信託受益権又は金銭等は含みません。
① 平成31年3月31日以前に取得をしたもの
② 平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間に取得をしたもののうち、その贈与者の死亡前3年以内に取得をしたものでないもの

 

4.まとめ

このように、贈与税が非課税となる「教育資金の一括贈与」が相続税にどう影響するのかについては、いつ贈与をしたのかによって取扱いが異なることに注意が必要です。

「教育資金の一括贈与」は相続対策としても有用ですが、改正を重ねるごとに相続対策としては厳しくなっている点があるため、注意していただく必要があります。

 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 社員 税理士 有賀 雄一
名古屋市立大学卒業後、金融機関、個人会計事務所勤務を経て、2013年アタックス税理士法人入社。主に中小企業から中堅企業までの税務顧問を担当、税務コンサルティング業務や組織再編実行支援業務等にも携わる。

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